かぜ

Saturday 14 November 2009 | |


「住みなれし空にいつしか行く雲の」


といって香子は羽衣を奪われた天女を舞う。もう二度と帰れない天を仰ぎ見ながらその雲をもうらやむように三保の松原の天人になりきり松波庄九郎の前で舞った。


「国盗り物語」の中の好きなシーン。庄九郎は美濃の守護職土岐頼芸に貴族出身の香子を献上すべく、彼女を説き伏せるためにわざわざ林の中に茶室をこしらえ て接待する。その2人が酔い、舞っている場面。雲のような自由さをうらやみ、一方で庄九郎の人となりに惹かれ美濃行きを半ば承諾しているような香子。情景 と心情がとてもきれいな印象に残る場面だった。

でも本当に雲は住みなれた空ばかりを漂っているのだろうか。空にも居心地の悪い場所はあって、雲もそこへ行きたいと願っているわけではないかもしれない。自由に見える雲もただ風に支配されているだけかもしれない。

そんなわたしは今、風邪に支配されつつある。


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